ised議事録

03-1213. 倫理研第3回: 質疑応答

質疑応答


東浩紀(以下、東):

 それでは、質疑応答に入りたいと思います。

 時間もだいぶ過ぎているので、お一人だけ。

崎山伸夫(以下、崎山):

 まだ国会を通過していませんが、「共謀罪*1という法案があります。これが通ってしまうと、非常にプライベートに近いコミュニケーションでも「通報しようぜ」という方向に流れてしまうのではないかと危惧しているんですね。

 メールであれば通信の秘密がある以上、通信傍受の法律を拡大していかなければどうしようもない。ただSNSであれば、公と私の線引きが公のほうに倒れやすくなってしまうと思うんですね。そうすると直感的には、私的領域は極限まで縮退してしまうのではないかと。

加野瀬未友(以下、加野瀬):

 ネット上の私的空間がなくなるということですよね。

東:

 SNSでも守れない。

崎山:

 Botが巡回できなくとも、「事業者さん、自分の管理下は巡回してくださいね」という話になりかねない。

東:

 しかし、実際は「ネット上にファイルを置いたらそれはすべて公的な領域で、私的なのはメールだけ」という方向へは向かえないでしょう。たとえばユビキタス社会のひとつのイメージとして、つねにネットワーク上に自分のプライベートファイルがあって、どこでもそのファイルを読み出して仕事ができる、といったのがあるじゃないですか。そういう領域はどうなるんでしょうね。とはいえ、そのディスク領域の一部を公開できるようなアクセス設定機能をつけるとなったら、これは事実上SNSと変わらない。それはプライベートなのか、パブリックなのか。

白田秀彰(以下、白田):

 ひとつの基準は暗号でしょうね。

高木:

 暗号というよりは、「アクセス制御機能」というのが5年前から定義されていて、いままではそれが基準になってきました。

加野瀬

 mixiはアクセス制御になっているわけですよね、一応。

東:

 アクセス制御していれば、プライベートだという意志表示になっている、と。

高木浩光

 また逆にアクセス制御をしていない限りは、公開なんだと思ってやらないとあなたの責任問われますよ、と。セキュリティ問題を扱う私の立場からすれば、そういう線引きをしないと本当におかしなことになると思います。たとえば、アクセス制御はされていないけれども、キーワードやクイズに答えると情報が見えてしまう、というものが出てくるとしますよね。じゃあこの責任はどうなんだとなると、これは「アクセス制御」はかかっていないからパブリックと見なすしかない。

白田:

 じゃあ、アクセス制御レベルみたいなものを決めて、ここを満たしたらプライベート、満たしてなかったらパブリックだ、と線引きするしかないんじゃないですか。その基準は、たとえば世界最高のコンピュータで何年かけて解けるかで決める(笑)。米軍のやりかたですね。

崎山:

 ただ、共謀罪の話を出したのは、SNSの場合アクセス制御があったとしても、チクるやつが出てきてしまってはどうしようもないのではないか、ということです。それにアクセス制御は実際かかっていたとしても、そこに公然性があるならばどれだけアクセス制御がかかっていても通信の秘密に抵触しない、として監視できるという話にされかねない。実際、公然わいせつ罪や名誉毀損罪等では公然牲について「不特定または多数の人が認識することのできる状態」とされているわけで、アクセス制御があってもアクセスできる人が「多数」であれば公然ということになる。同様の判断がそのまま使われてしまう可能性があるのではないでしょうか。

白田:

 どんなにゆるくても「アクセス制御」があると言い張っていればいい、という問題もありますよね。

東:

 うーん、とても面白い……のですが(笑)、あまりにも大幅に時間が過ぎてしまっています。司会として、今日はここで終わりにせざるをえません。どうも長い時間ありがとうございました。





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