ised議事録

10-0813. 倫理研第6回:質疑応答

質疑応答

谷口展郎:

 谷口と申します。鈴木さんにお聞きしたいと思います。鈴木さんは、ライフログ・サーバーの情報は個々人のレベルでアクセス制御できるというお話でした。しかし、社会の複雑化というのは、つまるところ人間関係の複雑化のことですね。これが認知限界の問題をもたらすわけです。そしてアクセス制御というのは、実は人間関係の把握のことです。すると社会が複雑化するということは、人間関係の把握自体が難しくなり、アクセス制御はできなくなって、情報技術に頼ることになるのではないでしょうか。このあたり、鈴木さんの議論に矛盾があるような気がしたんです。

鈴木健

 すごくいい質問ですね。なるほど、アクセス制御はできなくなりますね……。

加野瀬

 東さんはそのことを主張されていたんだと思いますね。

高木:

 ただ、IEのセキュリティ設定のように、高中低という設定をすればいい、と鈴木さんはおっしゃっていましたね。IEの設定でさえめちゃくちゃなんですが(笑)。

鈴木健

鈴木健
鈴木健
 僕の議論は、デフォルトのアルゴリズムが防げる程度にしか、世の中は複雑にならないという話なんですよ。そうしたアルゴリズムと社会の複雑さが共進化して、世界は少しずつ変わっていくのです。それ以上のことは起きないのです。

東:

 しかし、それはそうではない、というのが質問の趣旨ですよね。

加野瀬

 たとえば家族まで、会社まで、学校まで公開、というのがデフォルトの設定になるとしたら、それはいまとあまり変わらないんじゃないかという気がします。

東:

 それはかなりだめなアプリケーションだ(笑)。

鈴木健

 問題は、その社会の複雑化がどれくらい具体的な複雑さをもたらすのか。その複雑さが、保険の契約とどちらが複雑なのかという話です。

東:

東浩紀
東浩紀
 現実的にはこんなイメージを持っています。たとえば、加野瀬さんが鈴木さんにアクセス権限5を与えたとして、大失敗したとしますね。そうすると、大失敗したという情報がどんどん伝播して、みんなが持っているライフログ・サーバーでは、鈴木さんへのアクセス権が0.1くらいずつ下がっていく。つまりお互いのアクセス権情報を聞きあって相互調整する。

 これは手動でもできますが、谷口さんの質問の趣旨は、結局そても機械が自動でやってくれることになるんじゃないか、しかしそれは自分でアクセス権を決めているとはいえないだろう、というものです。いかがですか。

鈴木健

 たとえばアクセス権に対するメタ情報を与えればいい。たとえば閾値を決めるとか。

加野瀬

 なんだか、人をハブるためのシステムという気がしてきましたね(笑)。

高木:

 負け組の人は大変な状態になりますよね。

加野瀬

 結局、そこで勝つ人というのは、お金だけではなく信頼においても勝ってしまう。信頼の勝ち組と負け組ができてしまうとすれば、1回負けた人はどうやって復活できるのか。

東:

 そこでこそ富の再配分、信頼の再配分が必要なんですよ。

高木:

 はたして、信頼のセーフティネットは可能なのか。

加野瀬

 それはデータとなって永久に残る。忘却されないわけですよね。

鈴木健

 そこでコメントでも言及したように、忘却係数のようなものがあればいいと思っているんです。たとえばPICSYだと、自然回収率という変数があって、どんどん忘却されていきます。

東:

 ともあれ、谷口さんに対する回答は、「鈴木さんとしてはまったく考えていませんでした」ということで区切りをつけましょう(笑)。

 倫理研はいよいよ次回で最終回になります。今日は、いつもにもまして長時間で密度の濃い討議でした。みなさん、ご苦労さまでした。


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