ised議事録

12-10倫理研第7回:目次

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(開催:2005年12月10日 国際大学GLOCOM/ 議事録公開:2006年3月29日)

概要

 倫理研第7回のテーマは、「日本のCMC空間をいかにして豊かな討議空間にするか」というものである。

 小倉秀夫の講演は、その目的のために、表現の匿名性を制限すべしと提案する。なぜなら表現の匿名性は、祭り、ネットリンチ、コメントスクラムといった、「悪口で繋がる自由」をもたらすからだ。そこで小倉の提案するプラグマティックな対策とは、プロバイダ責任法の改正と、「共通ID制度」の導入である。その言論が誰によってなされたのかという追跡性(トレーサビリティ)を上昇させることで、CMC空間をより現実に近い空間にするというものだ。

 続く討議第1部は、この小倉の提案について議論が交わされる。辻大介は、言論のトレーサビリティの向上によって、マイノリティの表現の自由が損なわれるリスクを指摘する。また白田秀彰は、小倉の「CMC空間を現実に近づける」という発想に異を唱える。白田は、商業主義的なバイアスによって歪んだリアルワールドの言論市場に対し、インターネットの言論空間をそのオルタナティブとして位置づけるべきだと論じる。

 また北田暁大は、共通ID制度の正当性を問う。小倉は、「コメントスクラムに抑圧されてしまった弱者に、表現の自由を与えるため」と主張する。これを受けて東浩紀は、小倉の共通ID制度の提案は、「表現の自由の擁護」というよりも「騒音問題の対処」に近いのではないかと指摘した。

 討議第2部では、全7回の倫理研の議論を振り返り、日本の情報社会の問題と特殊条件について検討された。最後に選ばれたケースは、「嫌韓」の問題である。なぜゆえ日本のCMC空間は、匿名の2ちゃんねるにしても、顕名のmixiにしても、内容(メッセージ)を交換するコミュニケーションではなく、形式的な側面のみが前面化するコミュニケーション(繋がりの社会性)へ頽落してしまうのか。この問いに対する答えとして、白田は日本社会の(特に教育期間に陶冶される)「空気を読む作法」を見出す。すなわち情報技術は他人の行動を推測することを促進し、CMC空間は巨大な「言論の予測市場」を形成する。たとえばAmazonアフィリエイトやレコメンデーションによって、私たちは「他人が何を欲しがっているのか」を過剰に推測してしまうために、かえって不自由に感じてしまうといった事態が生じてしまうのである。

 それでは倫理研の結論は、「情報技術によって公共的な討議の空間をつくることはできない」という悲観的なものになるのだろうか。最後に辻大介は、「空気を読む」という作法は、本来流動性の低い社会に最適化されたものだと指摘する。問題は、CMCは流動性が高く、本来空気を読むことは適していないにもかかわらず、旧来の「空気を読む」作法が慣性として働いていることにある。であるとすれば、今後日本社会の流動性が上昇し、また別のコミュニケーション作法が生まれる可能性の残されている。これらの議論を最後に、倫理研はその全7回の幕を閉じた。

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