モジュール化

モジュール化

 設計工学、システム論をもとに彫琢された経営学・経済学のターム。

 あるシステム全体を、いくつかの独立したサブシステム(モジュール)に分ける。そしてその内部の情報を隠し、モジュール間のインターフェイスを標準化する(モジュール間の相互依存性を限定化する)こと。

 このモジュール化によって柔軟性が得られる。システム全体の構造を改変することなく、モジュールの取替や組換えによって、システムの機能を維持ないし変更できるようになる。

 元来、主要なプログラミング言語(C++, C#, Javaなど)に適用されている「オブジェクト志向化」「カプセル化」の設計思想とほぼ同義である。これは一部分のプログラムを書き換えても全体に影響が出ないようにプログラムの部分「カプセル化」し、取り決めた手続きだけをモジュール間でやりとりするようにする。

 これはソフトウェアに限らずハードウェアにもあてはまる。たとえばパーソナルコンピュータの内部は、あるルール・規格さえ守れば、CPUやハードディスクを入れ替えたとしてもパソコン全体としてはその統一性を崩すことはないといった具合である。

 なぜこの概念が経営学・経済学のタームとなったのだろうか。モジュール化研究の基礎論文となった『デザイン・ルール』は、90年代アメリカの情報産業の成功を、このモジュール化で説明する。つまり、モジュール化によって生まれた生産部品の柔軟性が、イノベーションと競争を活性化することを実証的に分析している。

 また日本の自動車産業研究を行う藤本隆宏は、このモジュール化の概念を応用している。たとえば情報産業のようにモジュール化の進んだ産業は、アメリカのような専門分化の進んだ組織文化には適しても、日本の組織文化には適さなかった。しかし逆に自動車のように、部品間の相互依存性が強く。「設計情報を製品化するための転写」が難しい産業はそうではない。これはむしろ日本の組織間・組織内におよぶ濃密なコミュニケーション(「すりあわせ」)こそがイノベーションを生む、と説明した。これを藤本は組織特性と産業アーキテクチャの適性と表現している。

 設計研第1回で村上敬亮が、「日本の自動車産業の強みを『すり合わせ』に見る藤本隆宏先生あたりの話が都合よく誤解され」と指摘するように、これからの日本の産業は「すりあわせ」だとするスローガンが近年見られる。これについてはモジュール化の議論が安易な日米文化比較論に陥っているだけであるとも批判されている。

参考書籍など

萌え要素のデータベース化=モジュール化

 モジュール化という概念の適用範囲は広い。

 また東浩紀の「動物化するポストモダン―オタクから見た日本社会」(講談社現代新書、2001年 asin:4061495755)に見られる近年のオタク(コンテンツ)産業の動向について、経済学者の青木昌彦は「モジュール化」と同等と指摘している。

 さらに精神分析医/批評家の斉藤環が「心理学化する社会――なぜ、トラウマと癒しが求められるのか」(PHPエディターズグループ、2003年 asin:4569630545)のなかで、近年の心理学ブームを「心のモジュール化」として表現した。