情報の不完全性

情報の不完全性

(isedキーワード「情報の非対称性」と同内容。)

 設計研第3回では、情報社会における「可視化」や「コンシューマー・エンパワーメント」などが議論されたが、その経済学的な前提にあたるのが、「市場の失敗」の要因のひとつとされる「情報の不完全性」あるいは「情報の非対称性」である。不完全あるいは非対称であるとは、一方の経済主体が他方の経済主体よりも相対的に多く情報を持っていることを意味している。

 よく例に出されるのは「レモン市場」の問題である。「レモン市場」とは、中古車のように「外見」だけではそのよしあしがわからないものが混じってしまっている市場のことだが、中古車の売買というのは、売り手と買い手との間に情報の非対称性がある。つまり、売り手にはわかっている故障も買い手にはわからないため、不正も生じやすいのは直感的にわかる話である。また逆に、売り手側側から見ると、仕入れ値の高い高品質の中古車を売ろうとしても、その情報は買い手には伝達されにくいために売れにくい。結果として、中古車市場は「レモン」だらけになる。

 これは中古車市場に限った問題ではないが、つまり情報の非対称性の強い市場というのは、正直な商売をしようとしても市場による最適配分は行われず、不正直に行動するほうへとインセンティブが働く力学系=場なのである。

 こうした問題を解決するために、たとえばオークションサイトなどでの「評価情報の可視化(取引人同士の相互評価システム)」などが導入されているのは周知のとおり。また、kakaku.comやアットコスメなどの「消費者による商品情報評価のコミュニティサイト」も、コンシューマー・エンパワーメントのひとつである。

参考

  • Akerlof, GA(1970), "The Market for Lemons: Quality Uncertainty and the Market Mechanism", Quarterly Journal of Economics, Vol. 84, pp. 488-500, 1970.