情報財

情報財

 経済学や経営学では、情報財(information goods)について次のように説明される。ものを売り買いする=取引するためには、主に二つの条件が必要である。1)お金を払わない人を排除できること、そして2)誰かが所有すればそれ以外の人は所有できないことである。しかし、本来的には情報や知識といったものは、この1)「排他性」と2)「競合性」を持っておらず、これはいいかえれば「公共財」としての性格を持つということである。そのため情報財を商品とするためには、本やCDやDVDといったモノ(物財)にバンドルさせる=憑依させることが必要だった。

 しかしネットワークインフラの普及・広域化・安価化や、コンピュータ環境の普及・モバイル化)によって、モノに憑依させなくとも情報財を享受できる条件が整ってきた。簡単にいえば、CDというモノを入手しなくとも、mp3ファイルという「情報」を入手するだけで、音楽を聴くという体験を得ることができるようになった。WinnyなどのP2Pファイルソフトの普及によって、情報財が対価を支払われずにフリーライドされ、レコード産業などのビジネスの根幹が危機に瀕するとされるのは、この情報財の公共財的な性格に由来する。

 さらにデジタル情報を再生産するために必要なコスト(限界費用*1)は、一度生産さえしてしまえば限りなくゼロに近い。これは、完全競争下においては、情報財の価格はゼロに限りなく近づくことを意味している。

 こうした情報財の性格から、情報財のビジネスモデルの理論がさまざまに検討されている。

プライバシー=個人情報=存在の匿名性」の情報財

 isedでは、情報財はいわゆるコンテンツ(表現物・創造物)に限定されない。たとえばAmazonに商品のレコメンデーションという情報支援(コンシューマー・エンパワーメント)を受けるとき、それは個人情報という情報財をAmazonに受け渡すことで得られる対価と捉えることができる。この問題については、倫理研第5回の「認知限界」をめぐる議論を参照のこと。

参考

  • 名和小太郎『サイバースペースの著作権』(中公新書、1996年 asin:4121013204