QWERTY

QWERTY

 「QWERTY」とは、現在までもっとも普及しているキーボード配列の形式を指すが、設計研第3回では「経路依存性」の代表例として使われる。

 そもそもQWERTYキーボードの成り立ちはこういうものだ。初期のタイプライターは、あくまで物理的な構成のためにわざと打ちにくい並び方に設計されていた。その後、キーボードは電子化され、何度か工学的にも打ちやすい配列が開発・提唱されてきたが、結局普及するに至らなかった。

 こうしたケーススタディからDavid(1995)は、QWERTYの経済学と副題をつけ、以下のような命題を引き出した。すなわち、単純な技術性能や価格メカニズムだけではなく、ごくささいな「歴史的な偶然性(初期設定条件)」によって、技術の普及経路 (path) が後世まで決定される(依存性=別の道を選べらなくなること)。これを「経路依存性(Path Dependency)」と呼ぶ。

 またこうした普及現象については、「同じ規格や技術を使っている人が多いほどその効用が増す」というポジティブ・フィードバックが働き、さらに、いくら他の技術が効率的に優れていても現在の方式を捨てて適応するためのスイッチングコストがかかる。そのため、ある程度の普及率(クリティカル・マスと呼ばれる)を超えると、デファクト・スタンダードの地位を確立するという、「ロックイン現象(偶然に過ぎないものが不動になること)」が生じやすいといわれている。(isedキーワード「ネットワーク外部性」参照のこと。)

 家庭用ビデオテープレコーダの規格、 VHS対ベータの競争がその例である。

 このような従来の経済学では解けない問題に対して、たとえばBrian Arthurに代表とされる、非線形モデルを用いて読み解こうとする「複雑性の経済学」とよばれる学派の存在が知られている。

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参考書籍

  • 依田高典『ネットワーク・エコノミクス』(日本評論社、2001年 asin:4535552487

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